シェムリアップに来る前から訪れてみたかったアンコール遺跡のひとつ「バンテアイ・スレイ(Banteay Srei)」。その繊細で美しいレリーフの数々にすっかり魅了されてしまいました。
バンテアイ・スレイとは「女の砦」を意味していて、数々の繊細なレリーフと優美な外観から、近代になってその名が付けられたのだそう。「アンコール美術の至宝」「クメールの至宝」などと称されています。
実際に訪れてみると、入口には近代的なWELCOME CENTERがありました。他の遺跡では見られなかったような施設に、たくさんの観光客が訪れているのかなと思いました。
敷地内には飲食店やお土産店もあり、きちんと清掃されているお手洗いを利用できるのも嬉しかったです。地図によるとATMまであるようですね。ただ、WELCOME CENTERから先は、他の遺跡と変わらず、太陽にさらされ続けるので、しっかり暑さ対策を整えてから遺跡散策に向かいましょう。
967年から990年頃にかけて建立されたバンテアイ・スレイ。当時の王は、ラージェンドラヴァルマン2世と、その息子ジャヤーヴァルマン5世ですが、実際は王師(王の側近)だったヤュニャヴラーハが建立したヒンドゥー教寺院です。
祠堂は3重の周壁に囲まれていますが、まずは早速、第1周壁に続く参道前に東塔門があり、破風に彫られた美しいレリーフが目を引きます。
東方の守護神インドラが3頭の象(アイラーヴァタ)に乗っているレリーフ。
塔門を抜けた参道の左右には、シヴァ神を象徴するリンガが並びます。女の砦に男性の象徴ということかしらと…。
もはや柱のみですが、所々に繊細なレリーフが残されています。
参道から第1周壁を抜けると、環濠、第2周壁と塔門、その先の祠堂が眺められます。
第2周壁の塔門。間近で見るとさらに洗練された印象を受けます。
正面のレリーフに描かれているのは、カーラの上に座るヴィシュイヌ神の姿。
続く破風のレリーフには、ヴィシュイヌの神妃であり、美と豊穣と幸運を司るラクシュミーが象からの聖水を浴びている姿が描かれています。精巧さにまさに美を感じます…。
柱にもヴィシュヌの乗り物の神鳥ガルーダと時間を象徴する神カーラのレリーフ。
さらに先に進むと、第3周壁があり、その塔門の破風には、ヴィシュイヌと同じくヒンドゥー教三最高神であるシヴァの踊っている姿が描かれています。ここまで塔門をくぐる度、精巧な彫刻の数々を前に、ため息が出てきます。
1923年、フランス人作家のアンドレ・マルローが、バンテアイ・スレイの中央祠堂に彫られている女神デバター像を盗掘して逮捕される事件が起こりました。のちに彼が「王道」という小説にこの話を書いたため、バンテアイ・スレイは一躍有名になり、デバター像は「東洋のモナリザ」と呼ばれるようになったのだそう。
ただ、2002年以降、この第3周壁から先は立ち入り禁止になってしまったので、中央祠堂と美しいデバター像は少し離れた場所からしか見ることができなくなってしまいました。
遠目から一生懸命、デバダー像を追いかけました…。
女神デバター像をはじめとする繊細で優美なレリーフの数々に魅了されつつ、バンテアイ・スレイの大部分が紅い砂岩で築かれているので、寺院そのものが赤やピンク色がかった”バラ色”のようにも見えて、「女の砦」の名のとおり、とても女性らしい印象を受けました。
当初は、このあと訪れるベンメリアを一番の楽しみにしていましたが、その前に素晴らしい遺跡に触れることができて、とっても良かったです。
ただ、同じぐらい印象に残ったのは、途中で倒れそうになるぐらい暑かったこと…。慣れない土地では熱中症などに気をつけて、遺跡鑑賞を楽しみたいですね。汗。