アイルランドを訪れた目的。本場でギネスビールを味わうことも楽しみにしていましたが、一番の目的はアイリッシュウイスキーの原点を感じること。2011年にスコットランドで蒸溜所巡りをしたときから、次はいつか必ずアイルランドを訪れたいと思っていました。
■ジェムソン(Jameson)
1780年創業のジェムソン社が生産している定番のアイリッシュウイスキー。アイリッシュウイスキーの大きな特徴は、蒸溜を3回繰り返すこと。創業者であり、初代マスターディスティラーのジョン・ジェムソンは、3回目の蒸溜で滑らかさが倍増して、理想的なウイスキーに仕上げられることを発見しました。歴代のマスターディスティラーは受け継いだ製法を今日も守り続けています。
ブレンデッッドらしい香ばしさがありながら、シェリーの香りを感じます。ジェムソンも”Exceptionally(=並はずれて,例外的に,非常に,特別に)”と強調していたとおり、こだわりの3回蒸留によるたしかにスムーズな口当たりで、とても飲みやすい味わいです。クセがなく、主張もないですが(いい意味で)、上品なウイスキーだと思いました。
現在は、蒸溜所として稼働していませんが、ガイドツアーで製造工程の見学や試飲を楽しむことができる「ジェムソン旧蒸溜所(OLD JAMESON DISTILLERY)」を訪れた記事はコチラ。
・【THE OLD JAMESON DISTILLERY】Vol.1「オールドジェムソン蒸溜所へ行こう!」
・【THE OLD JAMESON DISTILLERY】Vol.2「受け継がれるジェムソンのウイスキーづくり」
・【THE OLD JAMESON DISTILLERY】Vol.3「ウイスキー3種の比較テイスティング」
・【OLD JAMESON DISTILLERY】Vol.4「ジェムソン蒸溜所のレストラン&バーでオリジナルカクテルに酔い心地」
※オールドジェムソン蒸溜所は、2016年9月から2017年3月(St Patrick’s Day)までリニューアルのため閉鎖されています。
■ブッシュミルズ(Bushmills)
北アイルランドにある世界最古ともいわれるオールドブッシュミルズ蒸溜所で生産されているアイリッシュウイスキー。ジェムソンと同様、3回蒸溜するアイリッシュウイスキーの伝統的な製法で作られています。ブッシュミルズのウイスキーのスタイルに合わせて、バーボン樽、オロロソ・シェリー樽、ポート樽、マディラ樽の4種類が主に使われています。
スタンダードの「ブッシュミルズ オリジナル」は、3回蒸溜したモルト原酒とアメリカンオーク樽で最低5年間熟成されたグレーン原酒のブレンデッドウイスキーです。しなやかでスムースな口当たりは、アイリッシュウイスキーの3回蒸溜という伝統的な製法をダイレクトに感じられます。ふわりとハチミツのような甘さもありますが、軽快でフレッシュな味わいでした。
オールドブッシュミルズ蒸溜所では、プレミアム・テイスティングに参加して、熟成年数が違うものやシングルモルトなどを味わうことができました。
「オールドブッシュミルズ蒸溜所(Old Bushmills Distillery)」を訪れて、参加したガイドツアーやプレミアム・テイスティング、レストランなどのご紹介記事はコチラ。
・【OLD BUSHMILLS DISTILLERY】Vol.1「世界最古のウイスキー蒸溜所を訪ねて」
・【OLD BUSHMILLS DISTILLERY】Vol.2「アイリッシュウイスキー伝統の3回蒸溜」
・【OLD BUSHMILLS DISTILLERY】Vol.3「ブッシュミルズのプレミアム・テイスティング」
・【OLD BUSHMILLS DISTILLERY】Vol.4「蒸溜所レストラン“THE DISTILLERY KITCHEN”」
■コールレーン(Coleraine)
その名前は、1820年に北アイルランドのコールレーンに設立された「コールレーン蒸溜所」に由来します。かつて、”アイルランド1の蒸溜所”と評価された時代もありましたが、1978年に閉鎖されてしまいました。
コールレーンは、オールドブッシュミルズ蒸留所で生産されているブレンデッドウイスキーです。通常は北アイルランドのみで流通している希少なローカルウイスキーです。ライトな味わいですが、まさにブッシュミルズのようなスムーズさ、モルトの風味とほのかにキャラメルのような甘みがあります。
■クレステッド テン(Crested Ten)
1963年、ジェムソン蒸溜所からリリースされたブレンデッドウイスキー。他のジェムソンウイスキーと比べてポットスティルウイスキーの割合が多く(およそ60%)、残りの40%はグレーンウイスキーがブレンドされています。ブレンドされたウイスキーはシェリー樽で7〜8年間じっくり熟成されます。その味わいは、バニラやハチミツのような甘さとシナモンっぽいスパイシーさがあり、口当たりが柔らかいウイスキーでした。
ブッシュミルズ最後の夜、ホテル「Bushmills Inn Hotel & Restaurant」のバーで「コールレーン」と「クレステッド テン」を飲んだ記事はコチラ。
・【Bushmills Inn Hotel & Restaurant】「Gas Bar」で愉しむローカルなウイスキー(Bushmills/ブッシュミルズ)
最後のまとめは、【OLD BUSHMILLS DISTILLERY】Vol.3「ブッシュミルズのプレミアム・テイスティング」の記事から引用させていただきます。
これまで、ジャパニーズウイスキーやスコッチウイスキーを飲む機会が多くて、こんなにアイリッシュウイスキーに向き合ったのは、今回が初めてです。ブッシュミルズ シングルモルト21年のテイスティングのコメントにも書きましたが、アイリッシュウイスキーにはどこか漂う「品」を感じていました。決して、他のウイスキーに品がないということではなく、「上品」とか「エレガンス」に近いもので、スコッチが男性的なら、アイリッシュは女性的。すると、ジャパニーズは中性的でしょうか。勝手ながら、そんなイメージです。
アイルランドの激動の歴史とともに歩んできたアイリッシュウイスキー。その「品」とは、アイルランドという国が感じさせてくれた優しさの中にある力強くてしなやかな「気品」と共通しているのかもしれません。初めて訪れて、自らの肌で感じたアイルランドの歴史と文化、アイリッシュウイスキーの素敵な出逢いに感謝です。
今回、アイルランドを訪れて、すっかりアイリッシュウイスキーのファンになってしまいました。アイリッシュパブの楽しみ方のひとつとして、アイリッシュビールだけではなく、アイリッシュウイスキーを飲み比べてみたりするのも粋かもしれませんね。