1986年、ユネスコの世界遺産に登録された「ジャイアンツ・コーズウェーとコーズウェー海岸(Giant’s Causeway and Causeway Coast)」。古代の火山活動によって生まれた約40,000もの玄武岩の石柱群が、アイルランド島北端の海岸線に連なります。翌年の1987年には、北アイルランド環境省によって自然保護区に指定されました。
ジャイアンツ・コーズウェーとコーズウェー海岸は、北アイルランド北東の沿岸、アントリム州のブッシュミルズから北東へ約⒋.5kmの場所にあります。
ダブリンからのアクセスは、列車とバスを乗り継いでブッシュミルズに到着して、ブッシュミルズからは、Giant’s Causeway and Bushmills Railwayの列車かバスに乗ります(本数が少ないので事前にチェック)。シーズン外や運休日は、私と同じように遊歩道を歩いて行くこともできます。ブッシュミルズに立ち寄らない場合は、私が下車したコールレーン駅(Coleraine)先のポートラッシュ駅(Portrush)で下車して、そこからバスに乗って行くこともできます。
ということで、ダブリンからのアクセスはそれなりに不便です。北アイルランドの観光目的がジャイアンツ・コーズウェーだけなら、ツアーに申し込んだ方が時間も短縮されると思います。でも、せっかくならオールドブッシュミルズ蒸溜所の見学はオススメです!
9月のウィークデーは、Giant’s Causeway and Bushmills Railwayの列車が運休だったので、ブッシュミルズ駅から3.2km歩いて、ジャイアンツ・コーズウェーに到着しました!ビジターセンターに向かいましょう。
チケットカウンターでチケットを購入します。
すると、通常の大人チケットは8.5ポンドですが、歩いてきたと伝えると7ポンドになりました!公共の移動手段、自転車、徒歩で訪れた場合、”Go green and save”という取り組みで、大人1.5ポンド、子ども1ポンド、ファミリー3ポンドの割引になります。ラッキー♪
展示コーナーはあとで見学することにして、早速、海岸へ向かいます!
オーディオガイド。英語の勉強…と思いつつ、せっかく用意されていた日本語をゲット。
さぁ、歩きましょう!スタート地点から、目の前に広がる雄大な景色にワクワクします。
「ジャイアンツ・コーズウェー(Giant’s Causeway)」とは、「巨人の石道」という意味を持っています。その名前は、ケルト神話に登場るする伝説の巨人「フィン・マックール(Fionn mac Cumhaill)」に由来しています。
伝説によると、スコットランドの巨人「ベナンドナー(Benandonner)」に戦いに挑まれたフィンはその
ひとつのストーリーでは、フィンはベナンドナーを打ち破ったとされています。
もうひとつのストーリーでは、戦いを挑んできたベナンドナーがフィンよりずっと大きいことに気がついたフィンの妻ウーナは、フィンを赤ん坊に変装させて、揺りかごに押し込みました。すると、赤ん坊の大きさに驚いたベナンドナーは、赤ん坊の父親はフィンで、フィンは巨人の中の巨人であるに相違ないと考えました。ベナンドナーはフィンが追いかけてくることができないように、土手道を破壊しながら、スコットランドに逃げ出したといいます。
実際にスコットランドのスタッファ島にあるフィンガルの洞窟(Fingal’s Cave)にも同じ玄武
そうした神話の伝説もありますが、地質学では「柱状節理」というマグマが冷却固結するときや地殻変動によって形成される柱状の岩石です。玄武岩質の岩石によく見られるのもので、ほとんどが六角柱状になりますが、四角、五角、七角、八角のものもあります。
ただ、柱状節理自体はそれほど珍しいものではなく、世界には色々な規模のものがあって、日本でも天然記念物に指定されている兵庫県の玄武洞や福井県の東尋坊など各地で見ることができます。それでも、ジャイアンツ・コーズウェーは自然が創り出したものとは思えないほど芸術的でダイナミックな石柱群で、石柱の上を歩けることは世界的にも稀なのだそうです。
それぞれキレイな六角形をしていながら、高さのある石柱に圧倒されます。最も高い柱は12mにまで達するそうです。
さらに、岩石がゴロゴロしている海岸沿いを歩いていきます。
次の写真には「The Organ(オルガン)」というパイプオルガンを想像させるような並んだ石柱があります。さて、どこでしょう?
写真を拡大して、正解はこちら。ちょっとボケてしまっていますが、オルガンの下には人が並んでいて、石柱の高さ伝わります。
ビジターセンターから海岸沿いのブルーのラインを歩いて、「You are here」の分岐点までやってきました。先の海岸沿いを歩き続けるか、岩壁を登って折り返すか悩みましたが、高い場所からコーズウェー海岸を見たいと思ったので、登っていくことにしました。
目の前に続く岩壁へと進んでいきます。それにしても、よく見てみると…
先を歩く人たち、かなり小さく見えます。なかなか到達するまで距離がありそう…。
少し登っていくと、さらに上の方に小さな人たちを発見して、気合が入ります。
とは言っても、一心不乱に歩いているわけではなく、ふと立ち止まったり、道を振り返ったり、そこから眺めた景色は、そのときにしかない出逢えない景色です。巨人の伝説にも重ねてワクワクしながら、歩いていきましょう。
「The Shepherd’s Steps(羊飼いの足跡)」というビューポイントに到着しました!こんなに素敵な景色が待っていてくれて、やっぱり登って良かった!最初は大変かなと思いましたが、実際に歩いてみると、そこまでキツい道のりではありませんでした。
今度は下を歩いている人たちが小さく見えます。こんな眺めのときは「人がゴミのようだ!」というムスカのセリフをいつも思い出してしまう…(ラピュタが好きなだけで、決してゴミなんて思いません)。
海岸の反対側には、牧歌的な風景が広がっていました。
ジャイアンツ・コーズウェーには力強さを感じていたので、こんな長閑さがやっぱりアイルランドらしいなと思いました。
美瑛の「パッチワークの丘」のような景色です。
再び「人がゴミのようだ!」の眺め。
コーズウェー海岸からこの海を越えた北東の方角には、いつか訪れたスコットランドのアイラ島があると思うと、もっと晴れていたら見えたのかなぁとロマンが広がりました。
往路復路それぞれに違う眺望を楽しみながら、気持ち良くトレッキングを終えて、スタート地点のビジターセンターに戻ってきました。
歩くのが大変という人は、片道1ポンド/1.3ユーロでコースの途中まで行けるシャトルバスに乗ることができます。ご年配の方も多かったので、こうしたサービスも嬉しいですね。
ビジターセンターの館内には、ジャイアンツ・コーズウェーの伝説や歴史、周辺の自然環境の紹介、古いものから現代までのポスターなどが展示されていました。
現在のビジターセンターは2012年にオープンした建物で、Heneghan Pengという建築会社がデザインしました。ダブリンを拠点とするHeneghan Pengは直近で、ダブリン大学トリニティカレッジにある「ケルズの書(The Book of Kells)」と「旧図書館のロングルーム(The Old Library Long Room)」の新しいビジターセンターとエントランスのデザインをすることになったそうです。完成に注目ですね。
ブッシュミルズでの当初の目的は蒸溜所だけでしたが、世界遺産のジャイアンツ・コーズウェーとコーズウェー海岸まで歩いてきて、ケルト神話の伝説や古代の自然が創り出した遺産を肌で感じることができました。とても素敵な経験になりました。
それでは再び、Giant’s Causeway and Bushmills Railwayの遊歩道を3.2km歩いてブッシュミルズまで帰ります!いい運動です。
・The Giants Causeway Official Guide(オフィシャルサイト)