[my note] マザーハウスが教えてくれたシンプルで最も大切なこと

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バージョン 2

【マザー・テレサ ボランティア体験】について、マザーハウスを訪れるまでのことやボランティア活動の登録方法や活動スケジュール、マザーハウス周辺のインド料理のお店などの情報は、これまでの体験談に書かせていただきました。

Vol.1「マザーハウスを訪れるまで
Vol.2「マザーハウスの施設と参加登録について」

Vol.3「1日の活動スケジュール」
Vol.4「マザーハウス周辺のインド料理店MAP」

ここでは、もう少し個人的な想いや感想などをノートしておきたいと思います。

■マザー・テレサとの出会い
小学生の頃、「将来はシスターになりたい」と思っていました。そのときは、シスターのことを理解していたわけではなく、単純に大好きだった「サウンド・オブ・ミュージック」の主人公のマリアに憧れていたからです。シスターから大家族の母親になって、困難なときも力強く、大きな愛で家族を守ったマリアの生き方は、大人になった今でも魅力的に映ります。(考えてみれば、憧れのマリアはシスターではない生き方を選んだということですが、…)

当時、幼心ながらに、シスターになるための修道院を探していたとき、マザー・テレサの存在を知りました。当然、マザーの慈善活動についても知ることとなり、憧れでしかなかったシスターへの理解を深めたのは、そのときが初めてでした。今の私はシスターになる道から外れていますが、そうした憧れのような気持ちは、今でも持ち続けています。

今回、マザーハウスを訪れて、マザー・テレサが埋葬されている場を前にしたとき、畏敬の気持ちとともに、どこか安らかな気持ちにもなりました。そこに立つ人も、周囲のものすべてが包み込まれているようでした。今回、シスターと一緒に施設で活動できたことやシスターの講話を聴けたこと、マザー・テレサの誕生日にシスターが歌う美しい賛美歌を聴いたこと、すべてが心に刻まれました。

■「シャンティ・ダン」での役割り
コルカタにはいくつかのマザーハウスの施設があります。その中でも「カーリーガート」と呼ばれる「ニルマル・ヒルダイー死を待つ人々の家ー」が、マザー・テレサの活動の原点となっているので、そこでのボランティアを希望する人が多く、私も当初はそのように考えていました。でも実際は、「シャンティ・ダン」という女性の患者さんの施設と、「シシュ・ババン」というハンディーキャップを持った孤児たちの施設で活動をしました。どちらとも、女性のみが参加できる施設です。

シャンティ・ダンは、身売りされてしまった方、レイプ被害にあった方、虐待を受けて精神障害になった方など様々な事情を抱えている女性の患者さんが入院しています。他の施設と比べると患者さんの人数が圧倒的に多く、常に人手が足りていないと聞いたので、少しでも現場の役に立てるように人手を必要としているシャンティ・ダンで活動しようと思いました。

シャンティ・ダンに到着すると、患者さんにご挨拶する穏やかな数分間を経て、ティータイムの時間までは、毎日、洗濯をしました。次から次に洗い物が運ばれてくるのは、それだけの患者さんがいるから当然です。ひたすら洗い、絞り、干しました。布を絞るのは、なかなかの労力で、1日目にして、親指の付け根が切れるほどでした。これだけ大変なことを手作業でやっていることから、洗濯機を買うよりも、食事や薬など、命のために優先すべきものがたくさんあることが想像されます。

そして、シャンティ・ダンならではの活動で驚いたのは、患者さんにネイルを塗ってあげることでした。私は初日にこの経験をしたことが、シャンティ・ダンで活動を続けようと思ったきっかです。ネイルを新調して、喜んでいらっしゃる姿に、女性としての共通の喜びを感じて、私自身が嬉しくなりました。ネイリストさんの塗り方を思い出しながら、できるだけ丁寧に、綺麗に仕上げようと心がけました。シャンティ・ダンでの活動には、女性ならではの役割があって、同じ女性として気持ちに寄り添ったり、役立つことができるかもしれない、そんな風に思うことができました。

■ボランティア精神とは
マザーハウスではたくさんの出会いがありましたが、その中でも、ボランティア活動を5年間続けている日本人女性(A子さんとさせていただきます)がいらっしゃって、たくさんのことを教えていただきました。ご年齢が私の母よりも年上と伺って、歩いているだけでも汗が流れる暑いインドで、毎日の活動の労力を考えると、ものすごいパワーです。

マザーハウスでは、朝食にパンとバナナとチャイをいただくことができるので、参加者はそれを受け取るために並びます。そのとき、A子さんは、パンを袋から出したり、チャイのやかんを確認しながら、足りなくなるとシスターに追加してもらったり、参加者が滞りなく受け取ることができるように働かれていました。その周りでは、チャイをコップに注ぐ人や飲み終えたコップを洗う人など、数人がお手伝いをしています。ボランティア初日、私はただ列に並んで、朝食を受け取るだけでした。

翌朝、マザーハウスに到着すると、A子さんがお一人で忙しそうに朝食の準備してました。そして、朝食を受け取る参加者の流れも滞っていたので、前日に見たようにチャイをコップに注ぐ手伝いをさせてもらいました。それから数人が手伝いに加わりました。朝礼が始まる前、A子さんが「助かったわ」と言ってくださったので、ボランティアに参加する期間だけでも役に立てたらと、翌日からは早めにマザーハウスに到着するようにしました。

A子さんは、何かのきっかけがあったのか、この毎朝の準備を始められたのだと思いますが、朝一番に準備をしてくださるその姿に、真のボランティア精神を見たようでした。各施設で与えられた活動だけを切り取るのではなく、目の前で起きていることすべてにおいて、助け合うことができたらと思いました。全員がやる必要はないけれど、誰かがやる必要があるとき、率先して手を挙げられる人間であれたらと、マザーハウスでの学びとして、ボランティア精神を持ち続けていようと心に留めました。

一方、同じゲストハウスの宿泊者で、一日だけボランティア活動に参加した方が、「こんなに辛いと思わなかった。ボランティアを続けている人が信じられない。」と口にされました。その言葉にハッとしたようで、その率直な感想を受けて、あらためて「人それぞれ」と勉強させてもらったようでした。実際に私自身も、午前中の活動を終えたとき、身体の疲れもあって、午後の活動を億劫に思ってしまったことがありました。それでも施設に行けば、やっぱり来て良かったと思うので、続けることができたのだと思います。ボランティアは押し付けるものでもないし、色々な感情を持って当然です。率先して活動する人もいれば、辛いと感じる人もいるし、共感するもしないも、人それぞれでいいんだと思いました。

■無償の愛、家族の愛
マザーハウスの施設を訪れて、患者さんや子どもたちに会うことが、日に日に楽しみになっていました。名前を覚えれば、愛おしくなり、手を取れば、体温を共有しました。シャンティ・ダンの女性の患者さんは、年齢も近い女性同士だったので、愛おしいという感情とは少し違いましたが、午後に訪れていたシシュ・ババンで会う子どもたちに対しては、はっきりと愛おしい感情が芽生えていました。これまで、子どもを可愛いと思うことはありましたが、こんな風に愛おしく思ったのは、初めてだったように思います。

ある一人の男の子をお世話する機会が多くありました。窓から外を眺めるのが好きな子で、パッチリした大きな目をして、ふと遠くを眺めることもあれば、キャッキャと笑うこともあって、何を考えているのかなと思いながら、一緒に窓の外を眺めました。足に障害があるので、窓のサッシに掴まりながら立っていて、私はひっくり返らないように腰を抱いて、ひたすら目を離さないようにしました。足元が石製だったので、少しでも足元がふらつくと、ドキドキしました。子どもから少し目を離した隙に…という話を耳にすることがありますが、本当にちょっとの隙だったんだろうなと、あらためて、親御さんの大変さが身に沁みました。両親には、生まれてからずっと心配をかけてきたと思うと、まったく頭が上がりません。

マザーハウスでの活動を通じて、子どもを愛おしく思えたのと同時に、すっと心に入ってきたのは、「無償の愛」という言葉でした。私自身、両親の大きな愛情の中で育ててもらって、その愛を想うだけで温かさが胸に溢れます。この歳になるまで、結婚もせず、子どもを持つイメージも持てずにいました(できるか、できないかは別として…)。両親が私に注いでくれた無償の愛を同じように与えることができるのか、自信が持てなかったのかもしれませんし、その余裕がなかったのかもしれません。でも、今、自分のための時間を持てたことで、無償の愛というのは、難しいものでも、複雑なものでもなく、自然に生まれるものであって、もしかしたら私にもできるかもしれないと、少し前向きな気持ちになることができました。

1979年、マザー・テレサがノーベル平和賞を受賞したときのインタビューの中で、「世界平和のために私たちはどんなことをしたらいいですか」という質問に対して、「家に帰って家族を愛してあげてください」と答えられました。現代は、忙しいことや時間がないことを理由に、一番身近にある「家族を愛する」という幸せから余所見しているのかもしれません。もう一度、最もシンプルで大切なことを見直さなければならないと、ありがたい教えをいただいたことに感謝しながら、マザーハウスをあとにしました。

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