アイルランドで操業している4つの蒸溜所のうちの一つ、アイルランド島の北端にある「オールドブッシュミルズ蒸溜所(Old Bushmills Distillery)」。これまでも数々の蒸溜所を訪れてきましたが、”世界最古”といわれる蒸溜所を目の前にして、いよいよ気分が高まります。
ダブリンから途中で国境を越えながら、列車とバスを乗り継いで、ブッシュミルズに到着しました。車では3時間弱ぐらいなので、ダブリンだけの滞在の場合も日帰りツアーなどがあれば、オールドブッシュミルズ蒸溜所を訪れることができますね。
「The Diamond(ダイヤモンド)」と名付けられているブッシュミルズの中心部から蒸溜所までは700mぐらいです。少し坂を上りながら徒歩6〜7分ぐらいで到着します。
「tourism northern ireland」のVisitor Attractionで4つ星を獲得(discover northern irelandのサイトにリンクします)。評価基準などイマイチ不明ですが、おそらく最高は5つ星?すると観光スポットしても評価は高いのでしょうかね。
平日に訪れましたが、たくさんのゲストがいらっしゃいました。大人数のグループでなければ、ツアーの予約は必要ありませんでしたが、特別なテイスティングができるプレミアムツアーは実施回数が限られているので、事前にチェックすることをおすすめします(オフィシャルサイトからメールで問い合わせできるようになっていました)。
ここで、世界最古といわれるオールドブッシュミルズ蒸溜所の歴史のお話を少しだけ。
1608年、アントリム州を治めていたトーマス・フィリップス(Thomas Phillips)は、アイルランド王のジェームズ1世から王室公認の蒸溜酒の製造ライセンスが与えられました。ブッシュミルズのボトルに記されている「1608」という年号は、それに由来しています。
ただ、その当時から蒸溜所が存在していたのではなく、あくまでもライセンスが与えられたということで、この権利をトーマス・フィリップスが統治下の住民に再交付しました。この土地を開発していたHugh Anderson(ヒュー・アンダーソン)によって、オールドブッシュミルズ蒸溜所がオフィシャルに登録されたのは、1784年のことです。そのとき、同時に登録されたポットスチルの商標は、現在でも正規品の商標としてラベルにプリントされています。
※1757創業の「ブルスナ蒸溜所(Brusna Distillery)」を起源とする「キルベガン蒸溜所(Kilbeggan Distillery)」を最古とする説もあります。ブルスナ蒸溜所は1957年に閉鎖されて、キルべガン蒸溜所としてはウイスキーの生産を再開した2007年創業となっています。
1885年の火災による再建以来、オールドブッシュミルズ蒸溜所は力強く存続し続けてきました。Irish Whiskey Museumで学んだ歴史のとおり、1880〜1900年代初頭までアイリッシュウイスキーの黄金期があり、その後、1919年にアメリカで禁酒法が制定され、アイルランド内戦や第二次世界大戦を背景に生産が一時停止するなど低迷する時代もありましたが、戦後、ブッシュミルズの生産が再開されて人気を取り戻すと、世界各国、特にアメリカへの輸出が急騰したのでした。
1982年公開の映画『評決(The Verdict)』で、ポール・ニューマン演じるアルコール依存症の弁護士が、行きつけのバーでオーダーするウイスキーがブッシュミルズでした。そのことについては、ブッシュミルズのオフィシャルサイトでも大絶賛されております。
Star quality. The golden hues of Bushmills grace the silver screen in the classic movie The Verdict.
(まさにスターのクオリティ。ブッシュミルズのゴールドの色合いが銀幕のクラシック映画『評決』を美しく飾った。)
私自身も映画の中に登場するウイスキーはとっても色っぽいと思うわけですが、一時はアメリカの市場から締め出されたブッシュミルズが、アカデミー賞にノミネートされるような作品で描かれることは、当事者であればとても喜ばしいことだろうなと想像するのでした。
それでは、いよいよ蒸溜所ツアーに参加です。そのレポートは次の記事でご紹介します。
・Bushmills(オフィシャルサイト)
・Old Bushmills Distillery(オフィシャルサイト)